冴えない僕と、完璧美人の彼女
僕の名前は相沢悠斗(あいざわゆうと)。
社会人二年目、特に取り柄もなく、仕事もそこそこ、見た目も普通。
自分で言うのもなんだけど、冴えない男だと思う。
そんな僕には、どう考えても不釣り合いな恋人がいる。
三歳年上の彼女、白石紗耶(しらいしさや)。
職場の先輩で、誰もが振り返るほど綺麗で、仕事もできて、性格も穏やか。
社内でも「白石さんは高嶺の花」と言われていた。
なのに、なぜか彼女は僕を溺愛している。
「悠斗くん、今日も可愛いね」
「疲れた? ぎゅーする?」
「ねぇ、もっと私に甘えていいんだよ?」
そんな言葉を、毎日当然のように向けてくる。
僕はいつも思う。
どうして僕なんかを好きになったんだろうと。
同棲の始まりは、突然だった
同棲を始めたのは、半年前。
きっかけは、僕が仕事で大きなミスをして落ち込んでいたときだった。
「悠斗くん、今日うち来る?」
「いや……迷惑だし……」
「迷惑じゃないよ。むしろ来てほしい」
そのまま彼女の家に泊まり、翌朝、目を覚ますと――
「ねぇ、もうこのまま一緒に住まない?」
「えっ……」
「だって、悠斗くん放っておけないもん。私が守りたいの」
守りたい、なんて言われたのは人生で初めてだった。
気づけば、僕は頷いていた。
甘すぎる朝の時間
同棲生活が始まってから、毎朝が甘い。
「悠斗くん、おはよ。ほら、起きて?」
「……あと五分……」
「だめ。起きないとキスしちゃうよ?」
「……それは……起きる……」
「起きる理由が可愛いね」と笑いながら、彼女は僕の髪を撫でる。
朝ごはんはいつも彼女が作ってくれる。
料理上手で、栄養バランスも完璧。
「悠斗くん、今日の卵焼きは甘めにしたよ。好きでしょ?」
「うん……ありがとう」
「その顔、可愛い……」
僕が照れると、彼女は嬉しそうに頬を緩める。
まるで、僕が世界で一番大切な存在みたいに。
帰宅すると、彼女の溺愛モードが始まる
仕事から帰ると、玄関で彼女が待っている。
「おかえり、悠斗くん。今日も頑張ったね」
「ただいま……」
「ぎゅーして?」
「……うん」
抱きしめられると、彼女の体温がじんわり伝わってくる。
僕の心の疲れが溶けていくようだった。
「ねぇ、今日なにか嫌なことあった?」
「ちょっとだけ……」
「全部話して。私、悠斗くんの味方だから」
僕が話すと、彼女は真剣に聞いてくれる。
否定もせず、責めもせず、ただ寄り添ってくれる。
「悠斗くんは頑張ってるよ。私が保証する」
「……ありがとう」
「好きだよ。ほんとに、大好き」
その言葉に、何度救われたかわからない。
彼女の“溺愛”の理由
ある夜、僕は思い切って聞いた。
「どうして……僕なんかを好きになったの?」
「なんか、じゃないよ」
「でも……僕、冴えないし……」
「悠斗くん」
彼女は僕の手を取って、優しく握った。
「私ね、ずっと見てたの。入社したときから」
「え……?」
「誰よりも真面目で、誰よりも優しくて、誰よりも人の気持ちを考えてる。
そんな悠斗くんが、ずっと好きだったの」
「でも……僕、全然気づかなかった……」
「うん。そこも好き」
彼女は少し照れたように笑った。
「私ね、強そうに見えるでしょ? でも本当は、弱いの。
だから、悠斗くんみたいな人がそばにいてくれると、安心するの」
「……僕でいいの?」
「悠斗くんじゃなきゃ、だめ」
その言葉は、胸の奥に深く染み込んだ。
すれ違いと、涙の夜
そんな甘い日々にも、影は落ちる。
ある日、僕は仕事で大きなトラブルに巻き込まれ、帰りが遅くなった。
連絡もできず、終電で帰宅した。
玄関を開けると、彼女が泣きそうな顔で立っていた。
「……遅いよ……」
「ごめん、スマホの電池が切れて……」
「心配したんだよ……っ」
彼女は僕に抱きつき、震える声で続けた。
「帰ってこなかったらどうしようって……
もう会えないんじゃないかって……
私、悠斗くんがいないと……だめなのに……」
その涙を見て、胸が締めつけられた。
「ごめん……ほんとにごめん」
「……もう、離れないでね?」
「離れないよ」
その夜、僕たちはいつも以上に強く抱きしめ合った。
未来の話
休日の午後。
ソファで並んで映画を観ていたとき、彼女がぽつりと言った。
「ねぇ、悠斗くん」
「ん?」
「このままずっと一緒にいたいな」
「……うん、僕も」
「じゃあさ……いつか、結婚しよ?」
「……えっ」
「だめ?」
「だめじゃないけど……僕なんかで……」
「またそれ言うの?」
「……」
「悠斗くん。私はね、君と生きたいの。
君の隣で笑って、泣いて、怒って、全部一緒に過ごしたいの」
彼女は僕の手を握り、真っ直ぐな瞳で言った。
「だから、いつかじゃなくて……近いうちに、ね?」
その言葉に、胸が熱くなった。
「……うん。よろしくお願いします」
「ふふっ、可愛い」
彼女は嬉しそうに僕の頬にキスをした。
そして、今日も
同棲生活は、相変わらず甘くて、少し恥ずかしくて、でも温かい。
「悠斗くん、朝だよ。起きて?」
「……あと五分……」
「だめ。キスしちゃうよ?」
「……起きる……」
「可愛い」
僕は冴えないままかもしれない。
でも、彼女はそんな僕を愛してくれる。
そして僕も、彼女を心から愛している。
この日々が、ずっと続けばいい。
いや、続けていくんだ。
二人で、手を取り合って。
作者:同人サークルLogLog